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千葉県西千葉駅近くのケーキ工房「ル・グレ館」の設計をHAGISOが担当しました。
小さくてとても可愛らしい、いわゆる「街のケーキ屋さん」です。ただ、このプロジェクトでは「働き手にとっても魅力的な店とは何か」を起点に設計を考えました。
もともとル・グレは1988年に西千葉で創業したカフェです。そこから派生する形で、1997年にケーキ店「ル・グレ館」が生まれ、後に稲毛海岸へ移転しました。現在のオーナーである馬場さんご夫妻は、お二人とも元ル・グレのスタッフ。創業者の想いを引き継ぎながら、長年お店を支えてきました。
今回の計画は、稲毛海岸にあった「ル・グレ館」を西千葉へ戻し、カフェ・ル・グレの隣に移転させるというものです。
隣り合う2つの店を一体的に運営することで、より無駄のない体制をつくることができます。この背景には、どの地域でも共通している「人手不足」という課題があります。ただ効率化するだけではなく、働く人にとっても魅力的で、働き続けたくなる環境をつくること。それ自体を、馬場さんたちはこの移転の大きな目的として位置づけていました。
歴史あるカフェに寄り添いながら、新しい価値をどう重ねるか。
オーナーの想いと、これからの働き方のあり方をどう空間として実現するか。
そんなことを考えながら設計を進めていきました。










細長い店舗ですが、奥まで見通せる少し不思議な空間になっています。
今回の区画は、間口が狭く奥行きが長い形状で、一般的には店の魅力を街に伝えにくい条件でした。ただ、隣にあるカフェ・ル・グレも同じような平面構成で、アーチやヴォールトを使った空間によって、奥へ進むほどに小さな居場所が現れる“洞窟のような体験”をつくっていました。
この既存の魅力を引き継ぎながら、ケーキ店としての新しい空間をどうつくるか。
設計を進める中で思い浮かべていたのは、16世紀の建築家アンドレア・パッラーディオによる「テアトロ・オリンピコ」です。この劇場では、透視図法を用いた舞台装置によって、実際以上の奥行きがあるように見える街並みがつくられています。今回はその逆に、「街並みの中に奥行きが現れる」ような体験をつくれないかと考えました。厨房を含めた店の奥行きを街からそのまま見えるようにすることで、閉じがちな製造空間を開き、スタッフが自分たちの仕事がどのようにお客さんに届いているかを感じられる環境を目指しました。
一方で、厨房が見えすぎると雑然とした印象を与えてしまう可能性もあります。そこで、舞台装置の幕のようにアーチ型にくり抜いた薄い壁を連続させることで、奥行き方向の視線はコントロールしつつ、横方向の動線や機能性は損なわない構成としています。厨房機器や材料はその奥に収められていますが、アーチ壁のおかげで店内からは必要以上に目に入りません。
さらに、突き当たりには半円形の鏡を設置し、アーチが奥へと続いているかのような錯覚をつくっています。奥行きを「隠す」のではなく「見せる」ことで、働く人と街との関係を少しだけ近づける試みです。








このプロジェクトで求められていたのは、「新しい店をつくること」だけではなく、「これまでの時間を引き継ぐこと」でもありました。
カフェ・ル・グレと新しいル・グレ館が並ぶこの場所では、二つの店の関係性がそのまま街に現れます。ファサードのデザインはその最も重要な要素でした。
右手のカフェのファサードに多く見られるアーチのモチーフに呼応しつつ、単なる模倣にはならないようにバランスを探っています。色についても、緑を基調としたカフェに対して、ル・グレ館では補色である赤を用い、ひとつのブランドとしての対比関係をつくりました。強くなりすぎがちな配色ですが、トーンを細かく調整することで、街並みに馴染む関係性を目指しています。
また、二つの店の前に広がるテラス空間も重要な接点です。共通のサインや家具を少しずつ重ねていくことで、時間とともに一体感が育っていくように考えています。グラフィックデザインはこれまでもル・グレのブランディングを育ててこられたデザイン会社、KARAPPOさんとご一緒しています。
物理的にも二つの店をつなぐために、工房とカフェの間に提供口を設けました。ここからケーキや焼き菓子が直接受け渡されるだけでなく、日常的なやり取りや会話も自然に生まれています。
さらに、今回は移転プロジェクトであることから、厨房機器や照明、スタッフ用の鏡など、これまで使われてきたものをできる限り再利用しています。小さな窓越しに見える照明や建具のステンドグラスなど、新しい空間の中に過去の時間が静かに残っています。
そして何より印象的だったのは、現オーナーの馬場さんご夫妻が、創業者である吉村さんご夫妻にこの新しい店舗のあり方を理解してもらうことをとても大切にされていたことでした。設計のプロセスでも吉村さんご夫妻にご説明する機会をいただき、緊張感のある時間の中で想いが伝わった瞬間、皆で思わず涙ぐんでしまうという、なんとも幸せな打ち合わせでした。
お店の歴史を大事にしながら新たなことに挑戦していく馬場さんたちの姿勢はお店の現れ方にも宿り、きっとここで働くスタッフの皆さんや、お客様にも無意識に伝わり続けていくのではないかと思います。




| 竣工 | 2025年12月 |
| 設計期間 | 2025年4月~2025年8月 |
| 施工期間 | 2025年9月~2025年12月 |
| 所在地 | 千葉県千葉市中央区 |
| 用途 | 菓子工房、ショップ |
| 構造 | RC造 |
| 規模 | 地上4階(ショップは1階) |
| 延床面積 | 50.82㎡ |
| 種別 | 内装 |
携わる人たち
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