建築をより楽しめる設計ノート
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2025年秋、エキュート日暮里とタッグを組み、
「日暮里・谷根千 よりみちまっぷがちゃ」を制作しました。
HAGISO(まちまち眼鏡店)は、本企画の立案およびデザインを担当しています。
日暮里駅に設置されたカプセルトイを回し、
ランダムに出てきたマップを手に、まちへと歩き出す。
この企画は、そんなシンプルで新しい体験から始まります。



一本道を辿った先にあるゴールのお店には、少し路地を入らないと出会えない和菓子屋さんや、坂の途中にあるBARなど、日暮里・谷根千ならではの個性豊かなお店が並びます。店主たちとの会話も魅力のひとつです。ゴールのお店がどこなのか。“ちょっといいこと”とはどんな内容なのか。新たなまち歩きのスタイルを体験しに、ぜひ日暮里駅に足を運んでみてください!
販売場所:JR日暮里駅構内 エキュート日暮里
販売価格:100円
種類:全10種(デイver/イブニングver 各5種)
*「ちょっといいこと引換券」つき
【延長決定!】 2026年7月末まで販売中です
https://www.ecute.jp/nippori/campaign/3961
「日暮里・谷根千 よりみちまっぷがちゃ」の制作について
1 | 出会い方のデザイン
今回の企画で主軸に置いたのは、「まちとの出会い方をどうデザインするか」という点です。
このマップには、広範囲の網羅的な情報は載っていません。描かれているのは、寄り道を重ねながらゴールへ向かう、“一本道”だけです。


都市には、情報が溢れています。最短距離、評価の順番、あなたへのおすすめ。
気づかないうちに私たちは、均質で効率的な情報に導かれながらまちを歩いています。
出てくるマップは選べないこと。
あえて遠回りをすること。
まちまち眼鏡店の主観が織り込まれていること。
そうした不確かさの中に、“偶然の出会い”が生まれると考えました。目立たない小道に入ったり、目的を少し外れたり。その積み重ねが、“まだ見ぬまちの日常”へとつながっていきます。


2 | ゴールで待つ“ちょっといいこと”
カプセルには、マップと一緒に「ちょっといいこと引換券」が同封されています。引換券は、マップに記載されたゴールのお店で使うことができ、店舗ごとに異なる、“ささやかなプレゼント”が用意されています。


この仕組みを考える中で思い描いていたのは、このまちの“住人になるような感覚”でした。
「これ、一個おまけしておくね」
「試作中のメニュー、一口味見してみてほしい」
そんなふうに、思いがけないかたちで何かを受け取るとき、それがどんなにささやかなものであっても、何とも言えない喜びを感じます。そしてその出来事は、またこの店やこのまちを訪れたいと思う、“ささやかな記憶”として残っていきます。
そのまちで暮らし、同じお店に通う中でしか生まれないような関係性。その一端に触れられる体験をつくれないかと考え、ただのお得なクーポンではなく、「ちょっといいこと引換券」としました。ただゴールに着いて買い物をするだけではなく、店主とのちょっとした会話や思い出が自然と生まれるきっかけになればと考えています。引換券を手にゴールのお店を訪れると、プレゼントとともに、“常連になったような感覚”に触れられるかもしれません。
3 | デザイン・設計について
2020年にエキュート日暮里が掲げたコンセプト「ひぐらしおちこち」。“日暮里のあちこちにある、今と昔の魅力を感じてもらう”という考えのもと、2021年以降、HAGISOもその世界観を体現する企画やデザインを手がけてきました。これまでの表現は、主に江戸の雰囲気をベースに、下町らしさや歴史性を感じさせるビジュアルが中心です。


一方で、「今と昔」というテーマは、必ずしも江戸的なイメージだけに限られるものではありません。今回の企画では、その解釈を少し広げ、“昔”のイメージを昭和の時代へと置き換えて設計しています。
マップの仕様を検討する段階から、什器のデザインも含めて構想し、リソグラフ印刷の質感や、駄菓子屋の店先、街角のたばこ屋を思わせる佇まいなど、どこかで見たことがあるような、手触りのある存在を目指しました。カプセルトイという装置自体が持つ時代感とも重ね合わせながら、エキュート日暮里の空気感に溶け込みつつ、ふと足を止めたくなるようなデザインをかたちにしています。

最後に
これまで「ひぐらしおちこち」の取り組みとして、約5年にわたり、地元の方々やエキュートの皆さん、HAGISOのメンバーなど、“日暮里・谷根千ツウ”な人々の声を集め、さまざまな形のマップをJR日暮里駅のコンコースで届けてきました。
今回の企画もまた、そうした積み重ねの中から生まれています。開発にかかった期間は約半年。自転車で谷根千を駆け回り、気になるお店があれば扉を叩き、ときには見慣れない路地に足を踏み入れながら、まだ知らないこのまちの表情に出会い続ける日々でした。個性豊かで魅力的な個人店の多いこのエリアでは、店主の方々との何気ない会話や、そのお店が生まれた背景に触れるたび、新たな視点や発見をもらっていました。「このまちのためなら」と、企画に賛同し、応援してくださる方が多くいらっしゃったことも、強く印象に残っています。
この場を借りて、ご協力いただいた皆さまに、心より感謝いたします。
このマップを手に取った方が、このまちのどこかで、誰かと、ささやかな出会いや記憶を持ち帰っていただけたら嬉しいです。 (by まちまち眼鏡店店長 藤原)
携わる人たち
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