多様な過ごし方を受け入れる食堂
この住宅は、私の妻の両親とふたりの子供を含む3世代2世帯同居の自邸である。敷地の南面は初音児童遊園という街区公園に面しており、その角には「みしま地蔵尊」という戦没者の慰霊碑が立っている。公園には大きなケヤキそびえており、この樹のもたらす恩恵を多分に享受する。通常公園に面する住宅はセキュリティへの懸念から塀を立てて住宅との間を分断することが多いが、ここでは住居としてのプライベートな機能は2階以上にぐっと押し上げ、1階は公園や前面道路から連続した土間空間として開放している。内部から連続するベンチは誰でも腰掛けられるように道に沿って用意し、建具はすべてガラス建具とした。玄関扉も重厚なものではなくアルミサッシの勝手口扉とすることで公園に建つ公共施設のような雰囲気をもたせた。
1階の奥・西側はゲストルームとし、われわれが運営する宿泊施設「まちやどhanare」の客室の1室とできるように独立した水回りを備えた部屋として計画した。現在はコロナ禍で活用は難しいが、遠方から通勤する弊社の設計スタッフが仮住まいとして利用している。
2階はユーティリティフロアとし、3階を基本的な居住空間としている。室内はサッシの下端を隠すような腰壁を備えたベンチがぐるりと外周を囲んでいる。この部屋にはカーテンやブラインドの類は西側のコーナー以外は設けていないが、周囲に高い建物が迫っていないこと、ケヤキが目隠しになってくれることに加えて、腰壁が下からの目線を切ってくれることでほぼプライバシーには問題なく過ごせている。リビングとダイニング・キッチンは300mmのレベル差をつけることで、同じ空間ながら目線に変化をもたせ、開口部との関係も変わり公園との距離感が多様になる。サッシの3方の隠し框はアールをとったツガ材で内外をぬるっと繋げたうえで、腰壁と奥行きに差をつけることで僅かなレイヤーを重ね「ポツ窓による分節感」を軽減させた。これによって建築的要素と家具的要素の主従関係を反転し、内外を重層的に関係づけている。
概要
竣工 | 2020年4月 |
設計期間 | 2018年8月〜2019年7月 |
施工期間 | 2019年7月〜2020年4月 |
所在地 | 東京都台東区谷中 |
用途 | 住宅 |
構造 | 木造在来軸組工法 |
規模 | 地上3階 |
敷地面積 | 104.28㎡ |
建築面積 | 58.64㎡ |
延床面積 | 164.38㎡ |
種別 | 新築 |
体制
クライアント | 自邸 |
設計 | HAGI STUDIO(宮崎 晃吉・田坂創一) |
構造設計 | 金箱構造設計事務所(岡山俊介) |
施工 | 中部建設企業組合 阿部建築 |
写真 | 新建築社 写真部 |
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