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台東区谷中にある宗林寺と長明寺の間に位置する賃貸住居の改修。


建物の東西に寺の墓地があるため、目の前を遮るものはなく、1日を通して風が通り抜ける好立地である。かつてシャンソン歌手の住んでいた内装には、印象的なシャンデリアが残っており、レッドカーペットの階段も異彩を放っていた。オーナーからは、築年数も古いため、構造補強と内装の刷新の両方が求められた。また、賃貸住居として広いターゲットを対象にしたニュートラルな内装にすることも条件であった。


まず既存の木摺壁を撤去し、壁量計算を行いバランスよく面材の耐力壁を充足させた。内装は経済性を重視した天井の既存利用や、壁クロス貼りを前提とし、シャンデリアやアーチ枠、絞り丸太など既存のキャラクターに一手間加えるくらいのささやかな操作をした。2階は続き間形式を残しつつ、襖を障子建具に変えることで外部の自然光を内部に引き込んでいる。
建物のある通り沿いには立面が平坦な看板建築が軒を連ね、外壁色は仲良く皆ベージュである。一方で当建物は唯一切妻屋根をしており、玄関が外壁面よりセットバックしていたため、その特徴を活かし、玄関頭上の軒裏ラインで外壁色を塗り分けることで家型の小屋が宙に浮いたような印象を与えている。塗り分けは上層を屋根瓦のテラコッタ、下層をアスファルトのダークグレーとした。


この賃貸住居の改修では、街の立面に馴染ませるような同化ではなく、寺町の見晴らしのよい立地条件を生かして新たに外壁のプロポーションを再定義することで、場所の価値や個性を問い直してみたいと考えた。花見のシーズン、寺に咲く枝垂れ桜や萩を2階の和室から望む風景は格別だろう。(村越勇人)

概要

竣工2023年7月
設計期間2022年12月〜2023年3月
施工期間2023年4月〜2023年7月
所在地東京都台東区
用途賃貸住居
延床面積57.26㎡
種別外装、内装

体制

クライアント宗林寺
設計HAGISO(宮崎 晃吉、村越 勇人)
施工クラフト
写真村越 勇人 / HAGISO

メディア

TECTURE

PEOPLE

携わる人たち

村越 勇人

HAGISO | 設計士

外壁のデザインが肝。何の変哲もない外観が、建物の真ん中で横に一本線を加えて塗り分けたことで、一気にここの場所性を浮き彫りにしました。

宮崎 晃吉

HAGISO | 代表取締役

既存のレトロすぎるシャンデリアやアーチ枠も切り取ったように残すことでいいアクセントになってます。

梶原 千恵子

HAGISO大家さん

外壁塗装は当初表裏のみで側面は施工しない予定でした。現場に行って急遽全塗装に変更したが、最後までこだわってよかったです。

居間theater

実際に集まったときの居心地の良さに加えて、今後用途に合わせてこじんまりとでも変化していく可能性のある空間になったと思います。 通りに面した窓を使って、何か面白いやり方で街に働きかけることができないか思索中です。

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