多様な過ごし方を受け入れる食堂
群馬県富岡市にある、2軒長屋をリノベーションし、まちやど「蔟屋 MABUSHI-ya」をつくるプロジェクトです。
群馬県富岡市。2014年に世界遺産にも登録された富岡製糸場で有名な生糸の町である。しかしながらこうした外的な評価がもたらした変化は、必ずしも本質的なものとは言えない。
製糸場の見学に訪れる団体旅行客は、バスが駐車する駐車場から製糸場までの道は歩くものの、多くはすぐさまバスにもどり近傍の温泉街に行ってしまう。路面の土産物屋がかろうじて恩恵にあずかるのみで、その全体数も年々減っているのが現状である。
一方で、富岡のまちには等身大で暮らしながら商いを営む人たちが変わらず息づいている。大通りと製糸場に囲まれた富岡の中心街は、縦横にはりめぐらされた迷路のような細い路地によってできた、中心性のない界隈の町だ。ある界隈は日用品を扱う店々、ある界隈はスナックと置屋、ある界隈は料亭など、まちを歩く間に表情を変える。
こんな町で、2017-18年に開催されたリノベーションスクールをきっかけに「まちやど」を生み出す動きが生まれた。「まちやど」とは、まち全体を一つの宿と見立て、地域の既存の資源を活かした考え方のことである。この事業を生み出すために、まず事業主体たる法人が、富岡の商店主や、私を含めた地域外の者たち計6名によって組成された。出資金を集め、地元信用金庫から融資をとりつけたうえで、町中の空き家となっていた二軒長屋をリノベーションし、まちやどの宿泊室とすることとした。
築年数が不明であるほどの歴史を持った二軒長屋であるが、それぞれの建築で完結してしまうのではなく、あくまで「まちやど」の宿泊棟として振る舞うため最小限の機能にとどめ、まちとの接続性を演出するために表通りに面した縁側空間や、小さな裏庭などを既存のブロック塀などを活かしながら計画した。
内部は寝室となる室をのこして積極的に吹き抜けを作っていき、市松状の構成とすることで室の浮遊感を確保するとともに、風の通り道、奥行き中央部への採光を生み出している。二棟間の界壁を小屋裏まで区画することで防火上主要な間仕切壁としながら、遮音性能を確保することとした。
今後この最初の宿泊棟をきかっけに、町中の遊休不動産を利活用していくことで富岡に新たな日常とツーリズムの関係性を生んでいければと考えている。
概要
竣工 | 2019年4月 |
設計期間 | 2018年7月~2018年12月 |
施工期間 | 2018年12月~2019年4月 |
所在地 | 群馬県富岡市 |
用途 | 宿泊施設 |
構造 | 木造 |
規模 | 地上2階 |
敷地面積 | 406.59㎡ |
建築面積 | 93.99㎡ |
延床面積 | 130.42㎡ |
種別 | リノベーション |
体制
クライアント | 富岡まち繰るみ舎 |
内装設計 | HAGI STUDIO(宮崎 晃吉・小泉大河) |
グラフィック | ROWBOAT(田中祐亮) |
施工 | 荻野工務店 |
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