スワイプして
次の記事を見る

SCROLL

椅子展 ARCANA CHAIR

2015/1/14-2/1
@HAGI ART

東京藝術大学建築科1年生による椅子制作課題の成果展。
この課題では、タモ材を主材料とした実寸の家具:椅子をデザインし制作した。
テーマはタロットカードの「アルカナ」。「アルカナ」とは、ラテン語arcanum の複数形であり、
「机の引き出し」の意味から、引き出しに「隠されたもの」をさし、さらに転じて「秘密」「神秘」などの意味となった。
タロットカードは、大アルカナ22 枚と小アルカナ56 枚で構成されている。

今回は特に、寓意画が描かれた22 枚の大アルカナカードに注目し、
その中から1 枚任意に選び、それをデザインモチーフとし、各自の椅子をデザインした。さらに椅子
に合わせてカードを自分の解釈より再構成し、現代版アルカナカードを作成した。
最終的に、16 名の学生がデザインした椅子16 脚とオリジナルタロットカード16 枚がHAGISO に並ぶ。

the fool.
坂上えりか「ほっつきいす」
THE FOOLは自由、型にはまらない、発想力、 などの意味をもつ新しい可能性を求めるカードである。 一説では22枚の大アルカナカードはTHE FOOLの旅の物語である。 ウェイト版カードの中の若者は崖の上からここではない何処かへ歩き出そうとしている。そこで私は、同じ場所に留まらない放浪する椅子を考えた。 愚者である椅子が人を使い、新たな世界を求めているような、 椅子にくっつかれた人がTHE FOOLを体現しているような、そんな椅子を作った

the high priestess.
桂隼人「1+1=1」  
女教皇には有象世界と心霊世界という二つの触れ合う事のない世界を結びつけるという役目がある。私は”触れ合わない二つの世界(モノ)を座る人が橋渡しする”イスを考えた。イスは完全に分離した二つのピースからできており、座るときには倒れてるその二つのピースを立ち上げて出来た座面に座る。二つのピースは物理的に触れ合ってはいないものの、座る人によってそれらは間接的につながる事となるのだ。

the lovers.
原田栞「えらんで。」  
マルセイユ版の恋人たち、のカードの中央で一人の男性は自らの将来について悩む。痩せて魅力に欠けるが権力と経済力に富む中老の女性。はたまた、それはもう女神かと見紛うほどに瑞々しいうら若き乙女。二人のうち男はどちらを選ぶのか。この男の如く、この”えらんで。”を前にあなたはどちらを背に座るのかの選択を迫られる。あなたを支える力はあるものの肉のない骨組みを背にするのか、それともあなたに寄り添う繊細な貝殻にもたれかかるのか。この椅子に座るとき、あなたは一つの答えをだすことになるのである。

the chariot.
湊崎由香「小平中央公園階段21段目」  
木々に囲まれた公園の石階段の21段目から背伸びすると、茂みの向こうに線路と商店の並びが開けて見える。そんな景色を独り占めするように設置された高椅子を石階段の手すりに足をかけて登り、腰を掛けて手すりに足を休め見渡せば、上ってきた21段そして線路と商店の眺めがある。数分に一回踏切の警告音が聞こえ、黄色い電車が視界の真ん中を通り過ぎる。The Chariotの「征服」といった上に立つことの意から着想し、階段に設置し景色を独占する椅子。

the hermit.
後藤宏輔「深層の形象化」
隠者は孤独に思考する。隠者の様態の形象化。その過程を通じて、この椅子は完成した。「箱男」はダンボールの箱を頭からかぶり、都市を彷徨う。この現代の隠者は、自分一人だけの空間を常に必要としている。孤独な世界における、自らの深層に秘められた世界への旅。そこには、自己の世界と他者の世界を隔てるものが必要である。それは他者から不可視の部分と自己の拠り所をつくる。そこに産まれる自己の安寧と内省。この椅子は建築的である。※「箱男」は安部公房の小説『箱男』に登場する。

whee of fortune.
大澤周平「フィール・オブ・ウィール」
全てのタロットカードの真ん中の番号である「運命の輪」。人生の様々な転換の意がこの輪に込められており、その場に居とどまることができない。椅子全体の開口により、空間が抜けて見える瞬間が現れるなど、椅子の異なる印象を与える。 座面は密度の異なる格子からなり、座人の重心に変化が与えられ椅子が揺れるきっかけとなる。椅子がつくる大きな輪の輪郭の中心が座人の頭部に位置し、人が運命の輪に包み込まれているようである。

justice.
中原風香「見かけによらず(仮)」  
コンセプト文:正義が絶対に揺るがないものであることと、アルカナカードのもつ物語で、正義の女神テーミスが若者にかける言葉から感じる優しさを表現した。物語で若者はテーミスに近寄り難さを感じていたが、会話をして優しさと親しみを覚える。 この椅子のフォルムは、はじめ座ろうとする人に堅さを感じさせるが、椅子に腰をおろしたとき、その人は椅子のもつ柔らかさを知ることとなる。

death.
見富夏樹「ワームチェア」  
はじめ”死ぬ椅子”を作ろうと思ったんです。でも死そのものをかたちで表現するのは意外と難しい。椅子が死ぬってなんだ?って(笑。そこで”(生きていたものが)死んだ”と、表現すれば大変スマートじゃないか!と。でも道具としては・・・、嫌ですよね、生きてる道具なんて。ジレンマでした。  そんなジレンマはそのままに(笑、意外なギミックと手触りを随所に編み込んだデザインに仕上げました。けっして万全ではないけれど、あるものを愛する、楽しみながら使う、もしそんな暮らしができるのなら、それは幸せなことじゃないかと思うんです。これが”当たり前の良さ”から離れて、僕が目指した”良さ”でした。すわって、さわって、確かめてみてください。

the temperance.
栗脇剛「変幻自座居」  
節制のタロットカードには、陸上と水中にそれぞれ片足を置いた不安定な状態で平静を保つ大天使が描かれている。その姿から、二つの異なる状況の中で安定感を見出すことを示唆しているのではと考え制作した。この椅子は二つの部材から成り、組み合わせて初めて座れるものとなっている。組み合わせ方も複数存在するため、座り心地の異なる椅子が複数出来上がる。座る時のシチュエーションに合わせて半無限に形を変えられる椅子を構築した。

the devil.
稲荷悠「欲望」  
高い位置から人間界を見下ろしたい悪魔。自らが求める世界中のものを全て手に入れ、支配したいという強い願望を持つ。この場に降り立ち、それを試みるが、やがて他の場所の魅力に惑わされて大翼を広げ飛び去る。

the tower.
斉藤哲也「Re- chair (real現実、revelation啓示 、rebirth再生)」  
タロット大アルカナカードの16番目、THE TOWER の持つ意味は「0からのやり直し」。自らの技術、才能に自惚れ、これで良いと慢心する人類に対し、神が啓示を下す。タワーの崩壊は現状の崩壊を意味し、 人々はいとも簡単に地上へと突き落とされる。文字通り「崩壊」をイメージしたこの椅子は4つの脚のうち1本が途切れている。人はこの椅子に、緊張感を持ちながらゆっくりと体重をかけ、日頃毎日何の難しさも持たずに行う、「座る」という行為に不安を覚える。​

the star.
長谷光「All roads lead to the Light」  
お気に入りの本を小屋に置き、読書を楽しむ椅子。夜空に輝く星である、椅子の一番上の読書灯を目指し、梯子や階段、トンネルを通り、時には座る光の乙女の手を借りながら、こびとは椅子をのぼっていく。カードに7つの星が輝くように上にたどり着く道は幾通りもある。のぼりきった先にあるのは小さな小屋。窓から間近に迫る星を見上げ、こびとは夜明けが近いことを思う。この椅子に座れば、あなたにもきっとこびとが見えるはず。

the moon.
大谷七海「座月」  
フランスで生まれたアルカナカードのTHE MOONの正位置での主な意味は“不安”である。 “不安”というのは精神面で言うとマイナスなイメージがあるが、椅子でいうと“不安”はプラスのイメージになり得る。また、日本では古来から月を愛でる文化がある。西洋では不安を感じさせる月も日本では癒しを感じさせるものになる。 座月は和室で月を愛でる為の不安定な座椅子である。

the sun.
和智茉奈美「くるくる、ぱたぱた」  
太陽の国から来た少女は、ひまわりの種を差し出し、こう言いました。「小さな種がやがて芽を出し大輪のひまわりとなり、常に太陽を目指すように、あなたも楽しく情熱的に未来へ向かってください。この木の帯は太陽へと続く道です。木の帯が道、壁、あるいは休む椅子になるかは、あなた次第です。」あなたが遊び心をもって”くるくる、ぱたぱた”することで、あなたの、またはあなたと誰かのための椅子ともなり得るでしょう。

judgement.
富永秀俊「更新」  
窓からの風によって角ばった椅子が更新されるという妄想に形を与えた。元となったカードは、最後の審判前に死者たちが復活し祝福される劇的なシーンを描いており、再生や更新という意味に解釈される。ここでは、古く角ばった椅子の更新を試みた。シカクくつくられた椅子に、窓からの風を想起させるカーブが貫入し、背板をぱらぱらと運んでゆく。新しい背板に誘導され、肘掛を正面にして座ることで、窓からの眺めを楽しむことができる。

the world.
小野亜貴子  
「RICERCAR」バッハの、RICERCARが聴こえてくる。鏡映しになった2つの旋律が、美しく巧妙に絡み、巡り逢い、始まりも終わりもない音楽を、永遠に紡ぎ奏でる。 それは正に、世界が男と女、光と闇、善と悪……二元論の絶妙な駆け引きをしながら寄り添い、調和し、完全な世界となること、それが輪廻転生すること(0:ThePoolへの回帰)を意味する「21:The World」と重なる。 地に足を着け、そっと腰を下ろすと、2つを重ねた想いがきっと聴こえてくるはず。静かに繊細に。 制作材料:タモ材、ナイロン弦(染料)、ペグ

オープニングパーティー&公開講評会
1.14(水)
19:00- 公開講評会
20:00-懇親会(オープニングパーティー)
ドリンクはキャッシュオン制となります。
藝大フレンズ賛助金助成事業
制作プロセスWEBサイト http://arcanachair.tumblr.com/

RELATED
INFORMATION

関連情報