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ハギエンナーレ2012

2012 2/25(Sat) – 3/18(Sun)

東京の下町谷中に建つ木造アパート「萩荘」。 築50年以上の歴史をもち、2004年より約7年間、 芸大の学生の住居およびアトリエとして様々な人に親しまれてきました。 長い歴史を刻んできた建物が、2012年春解体に向けて閉鎖されます。 閉鎖に先立ち、今この瞬間の萩荘にしかできないことを実現すべく、 入居者、および萩荘にまつわる人々による作品として開放されます。 萩荘の空間自体を使った作品、 空間にインスピレーションを受けて展示される作品などが、 期間中萩荘を満たします。

“HAGISO” , the wooden apartment stands in traditional district of Tokyo has more than 50 years history from its built. From 2004, for 7 years, it has been used as the residence and studio for students of Tokyo University of Art This spring, it will be close for dismantling. Before it’s dismantling, we wanted to do something that can be done for only “Now and Here”, so we decided we will open this building to public as Art piece. Some may use space itself as Art, some may put an Art piece inspired by space… The entire building will be filled in works.

参加アーティスト:

御幸朋寿 酒井真樹 平川祐生 間宮洋一 宮崎晃吉 湯沢満 磯谷博史 pinpinco イノマタアキ 藤木倫史郎 吉川一陽 笠島俊一 野口一將 加藤万利子 町田恵 ヒラカワアツシ 久世温子 湯浅良介 小松亜有美 鈴木優香 吉川記代子 野中浩一 黄川田勇太(出品順)

企画コンセプト:

ハギエンナーレ2012 ハギエンナーレ2012は、東京、台東区谷中にある「萩荘」において、2012年2月25日から3月18日までの約3週間開催された、解体前の住宅を作品化し、公開するプロジェクトである。

萩荘

「萩荘」の立地する台東区谷中という土地は、都内でも震災、戦災から免れて現在まで古い木造住宅の残る下町である。江戸時代より上野寛永寺の子院が多数建立されたため、寺院と墓地が多く点在し、「萩荘」もまた日蓮宗寺院、宗林寺の境内及び墓地に隣接している。江戸時代より、萩が多く植わっていたため「萩寺」と呼ばれていた宗林寺に由来して「萩荘」と名付けられた。池波正太郎の小説にも、「萩寺」の一説は用いられている。 
もともと共同住宅として使われていた「萩荘」は、いつしか空き家となり、使われない状態が続いていた。ここを2004年より東京藝術大学建築科の学生を中心に数人が借りることとなり、改修を重ねながら常時6人ほどで今日まで住居兼アトリエとして使用されてきた。

死に化粧

住宅、建築は、誕生、建設される時こそ地鎮祭や上棟式や竣工式など様々な儀式をもって盛大にもてはやされるが、いざ取り壊しとなると一瞬でなくなってしまう。それは建築の大小、歴史の長さに関係なく、一度壊されるともはや何事もなかったかのように忘れ去られるのが常である。 谷中という歴史をもった下町においてもそれは例外ではなかった。ある日、萩荘の並びに建つ歴史ある銭湯が突然なくなった。我々萩荘の住人は勿論、近隣の人々に非常に愛されていた銭湯だっただけに、その喪失感と、解体に対してどうすることもできなかった無力感は大きかった。
今回「萩荘」が解体を前提に閉鎖されるという状況で、何もせず萩荘を葬るという選択肢は我々には選べないものであった。解体を止められないまでも、死に化粧を施して一花咲かせ、解体までの過程を見守っていくことが、「萩荘」の死に向かう儀式としてふさわしいと考え、ハギエンナーレ2012は開催されることとなった。

解体創作行為

築50年程になる「萩荘」は、持ち主である宗林寺の好意もあって、基本的な構造を残しながらも、壁を取り去らわれ、天井をはぎ取られ、床を打ち直されることで新たな姿に更新されてきた。そういった面では、ある意味我々が住んだこの8年間も「萩荘」という家にとっては構築されていくというよりは、蝕まれていくことで延命される過程であったといえる。この「萩荘」の緩やかな死へ向かう一連の創作兼解体行為の最終過程として、ハギエンナーレ2012は位置づけられた。創作行為とは、何かを新たに生み出すことであると同時に、元々あった状態を変容させる以上、何かを失っていく過程であるともいえる。従って作品は、萩荘自体を解体、侵食、加工、付加することで変容させるものとして制作された。

基本的に部屋の住人が自分の部屋を作品化している。また、萩荘にまつわる作家にも多く参加してもらい、廊下や階段やリビングなどの共用空間に作品が設置された。 部屋の床をはぎ取り空間を拡張するもの、廃材で廊下を外部化するもの、柱を彫刻するもの、壁に穴をあけようとするもの、補修行為によって人の介入の痕跡を明らかにするものなど、ただ作品を「雰囲気のある空間に設置する」という展覧会ではなく、空間そのものを主題とする作品が多く作られ、また目指された。

結局「ハギエンナーレ2012」には、1407人の来場をいただいた。東京の下町の片隅にある木造アパートにこれだけの人々が集まるというのは、妙な現象であるともいえる。ハギエンナーレが「萩荘」の葬儀のような儀式であったとするならば、それに参列する人々は何を思いここを訪れ、何を持ち帰ったのであろうか。

PEOPLE

携わる人たち

宮崎 晃吉

HAGISO | 代表取締役

無くなる建物のお葬式としてのハギエンナーレの期間は、訪れる皆さんの萩荘への愛情が感じられる幸せな時間でした。

顧 彬彬

HAGISO | 取締役

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