心も体も切り替わる、日常と非日常の中間地点
「いつかこの街で漢方クリニックを開業したかったんです。」
そんな言葉とともに中西さんからお声がけいただいたのが2019年の冬でした。中西さんとわたしたちはHAGI STUDIOが運営する「まちの教室KLASS」にお子さんとともに通ってくださって以来のお付き合い。楽しく教室を続けてくれていた息子さんのお母さんとしての中西さんから、こういうかたちでお話をいただいたのは少し意外でした。中西さんはお住まいも近くにおかれていますが、谷根千エリアが本当に好きで、自分が開業するならこの地域と、決めていたそうです。
「生活を包む」漢方クリニック
中西さんは西洋医学の知識も備えた心療内科医でもあるわけですが、開業を目指しているのは「漢方クリニック」。わたしたちは正直漢方クリニックの診療をうけたことがなかったため、まず漢方とはなにか、西洋医学との違い・共通点などを伺うことからはじめました。そんなお話の中で浮かんできたのが、「生活を包む漢方クリニック」という考え方。
病院やクリニックに通院することって、どうしても少しネガティブというか、「治療しに行く」という感じがすると思うのですが、漢方の場合、即効性のある治療よりももっと根本的な心身の調整のように思えました。薬も自然由来の成分でできていますので、付き合い続けられる自分にあった漢方との出会いを見つける場、とも言えます。そんな関係性を結びつけることができる空間とはどのようなものでしょうか?
はじめ中西さんにご依頼いただいたのは、グラフィックデザインとWEBデザインのご依頼でした。しかし、クリニックで過ごす時間の質や、体験が伴って初めてロゴイメージとの一体感が生まれるという思いから、空間のデザインも担わせていただくことを一緒にご提案しました。クリニックという特殊な用途であることから、ある程度決まった設えを提供する設計施工会社に依頼するつもりだったとのことですが、設計が分離することによる施工内容・費用の管理によるメリットにもご理解いただき、最終的には空間も含む全体のデザインをご依頼いただきました。
繊細な造作家具が多いデザインとなったため、施工は「hanare」や「くらうましもきた」「神宮前のオフィス」を手掛けてくれた元家具職人でもあるTRUNKの松本亮さんにお願いすることなりました。
自分のこころとからだに向き合う待合室
通いたくなるクリニック、通うことが自分の生活を整える習慣となるようなクリニックの待合室はどうあるべきか。ここでは来院者それぞれが自分の時間を過ごせる待合室とすることにしました。
入り口のドアを開けると、まず来院者はベンチに座って履物を脱ぎます。受付カウンターで問診は基本的にWEB上で事前に行われているため、スムーズに手続きを済ませます。
受付カウンターには、漢方茶のセットが用意され楽しむことができます。
お茶をもって待合席に座ると、院長おすすめの文庫本が用意されており、お茶と本を置くために設えられた小さなテーブルと、自分のこころとからだに向き合うことができるちょっとした仕切りに包まれ、日常から少し離れた体験を味わうことができます。
概要
竣工 | 2020年5月 |
設計期間 | 2019年12月〜2020年2月 |
施工期間 | 2020年2月〜2020年5月 |
所在地 | 東京都文京区千駄木 |
用途 | クリニック |
種別 | リノベーション |
面積 | 77.04㎡ |
体制
クライアント | 中西 幸子(あいそめクリニック院長) |
設計 | HAGI STUDIO(宮崎晃吉・児林 幸輔) |
サイン・グラフィック | HAGI STUDIO(上原 凛) |
WEBデザイン | IRORI(細田 佑介) |
施工 | TRUNK(松本 亮) |
写真 | 馮 意欣 |
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